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魔法の杖によって、眠れる森の美女のように眠り続けていた「金」が、「片目を開き始めた」のだ、とも説明した。 私には、「M教授のノーベル賞受賞」は、「金」に、「残りの片目を開かせる」魔法の杖であるように、思えてならなかった。

なぜなら、M教授は、現役の「金本位制復帰論者」の重鎮だからである。 また、このように思った理由には、「M・フレミング」を受賞理由とするのならどうしてもっと早く受賞させなかったのか、という疑問があるからだ。
あまりにも遅すぎるではないか。 だから、このタイミングでのノーベル賞受賞には、かくされた政治的意図や狙いが、あるように思えてならないのである。
東ティモール問題1999年、独立運動が激化し、その結果併合派の武装築団と独立派の間で過激なテロの応酬で治安は悪化し、一時騒乱状態となる。 国連安保理により事限収拾され、国連東ティモール暫定政府が発足数年前、正確には1996年3月に、「東ティモール独立」の活動家、Bロ司教と国外から独立運動を支援するRモス・ホルダ民族抵抗評議会特別代表に、ノーベル平和賞が与えられた。
それまで各国は「東ティモール問題」を、インドネシアの内乱、つまり「インドネシアの内政」と認識していた。 ところが、独立の活動家にノーベル平和賞が授与されたことにより、この独立運動は「葵のご紋の印龍」を手にしたように、国際社会から正当性を認知されるようになった。
国家反逆罪の対象から英雄へと格上げされたのである。 私見によれば、インドネシアのクローニー主義(身内優先)の政治社会経済構造を、民主化させようとのアメリカのアジア戦略の一環ではあるが、本音は、「東ティモール」の領海内の海底の石油、天然ガスの権益をインドネシアから剥奪して「東ティモール」へ移管させ、「東ティモール」と新しい利権協定を結ぼうというアメリカの国家戦略、であろう。
このさいノーベル平和賞は、重大な政治的役割を果たしている。 当然のことながらインドネシアは困惑した。
ノーベル平和賞以後、南アフリカのM大統領は、インドネシア訪問のさい、獄中の独立運動の指導者Gとも会談した。 また、オーストラリアは「東ティモール」に、インドネシア軍の横暴から人民に人道的支援をするとの理由で軍隊を派遣した。

日本は、金銭の支援を行った。 その後、「東ティモール」は、正式な独立が達成されるまで、アメリカ・ドルを公式通貨とするとも、発表している。
ノーベル賞はたんなる過去の顕彰ではなく、近頃は「特別な意図」をいだいて、受賞者が「選考」されている、との話も聞くようになった。 ところで、M教授のノーベル経済学賞受賞には、「特別な意図」は、あるのか。
まちがいなく、「特別な意図」はあったと思われる。 それは、「M教授を、金本位制復帰論の広告塔にすること」である。
「金本位制復帰」のコンセンサス作りのため、各国の政府関係者および金融当局者に対する根回し役の大任こそ、M教授がノーベル経済学賞を受賞した最大の理由ではないかと、思ったのである。 もちろん背後でシナリオを書いているのは、アメリカのストラテジストに違いない。
ノーベル経済学賞の受賞者には受賞後の1、2年は、世界のメディアが注目し、シンポジウムやフォーラム、そして講演会などのメインスピーカーとして、重用するからである。 1998年のA教授の場合もしかり、それまで名前すら知られていなかったが、今や日本でも何冊もの著作が翻訳されている。
M教授の行動力には、目をみはらされるものがある。 2000年3月 日に台湾で総統選挙があり、民進党のT水扁党首が当選した。
新総統の就任式は5月加日だが、M教授は総統選挙直後に訪台して、3月配日には、総統就任前のT水扇氏と台北で早々と会談している。 台湾は1997年のアジア通貨危機をみごとに乗り切った。

市場が氾濫を起こす前に、小刻みに為替レートを早め早めに調整して、金融投機家に付け入る機会を与えなかった。 未確認ではあるが、台湾政府はG連邦準備制度理事会(FRB)議長の前任者であったP氏を、金融財政顧問に迎えていたとのことである。
台湾は現在IMFに加盟していない。 それゆえ台湾の金保有高は、IMFからは発表されていない。
しかし、約1000億ドルの外貨準備のなかで、「金」の保有高が高いことは、1部の関係者にはよく知られていることである。 M教授は、その後中南米諸国を歴訪して各国で中央銀行などの金融当局者と精力的に交流を深めている。
中南米諸国ではエクアドルが自国通貨を廃止して、アメリカ・ドルを新しい自国通貨とすることを決定して、すでに移行期に入っている。 台湾や中南米などの世界経済の傍流の地で、出稼ぎをしている「金本位制」を売り歩く、変人・奇人の学者ととらえると、大間違いをするであろう。
M教授はノーベル経済学賞受賞直後の3月に、パリでワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)主催の国際会議で講演をしている。 ちょうど「ワシントン合意」の2ヶ月後のことである。
講演の対象は、各国の中央銀行家であった。 この講演のなかで、M教授は2つのことを強調した。
1つは、「金は何世紀にも世界の中央銀行の準備資産の中で、重要な役割を続けてきた」これは自国通貨をドルと完全な固定相場制にする段階から、さらに大きく経済システム全般までアメリカ・システムと同一化させようというものである。 アルゼンチンやエルサルバドルも、「ダララィゼーション」の意向を表明している。
こうした動きの陰に、M教授の影がちらついている。 る」ということで、2つには、「金価格は2010年までには、600ドル前後まで上昇する」ということであった。
おそらくこのときのM教授の講演は、数年後には「歴史的な講演」であったと、高く評価されることであろう。 2000年に、N本経済新聞主催、「N経ゴールド・コンファレンス」が、開催された。
今回は大きな驚きがあった。 それはスピーカーの「視点」が、明らかに前年までと変化していたことである。

どのような「視点」の変化かといえば、「商品としての金」の視点から、「通貨としての金」の視点への大転換であった。 この「視点」の変化の意味は重大である。
私は1995年に上梓した『金―新時代への架け橋」でも、「N・ショック」以来アメリカによって意図的に「通貨としての金」は背後に追いやられ、「商品としての金」がこれまた意図的に強調されてきた、その狙いは新しい国際通貨体制で主導的立場を発揮するために、アメリカから第2次世界大戦以後に流出した「金」の太宗を奪還するためであった、との見解を提示してきた。 この私の「視点」は1974年の『金ブームを狙え』以来、まったく変わっていない。
世界経済フォーラム(通称ダボス会購)日米欧の民間企業が参加する世界経済フォーラムの年次総会で、毎年1月にスイスのダポスで開かれる。 世界の優良企業の経営者ばかりでなく各国首脳も参加するため、注目を集めている「N経ゴールド・コンファレンス」では、フランス中央銀行外国為替部のディレクター・Eルベ・フェラーニ氏と、ロンドンで発行されている「セントラルバンキング」誌の主幹兼発行人のRバート・プリングル氏のお二人は、はっきりと「通貨としての金」にシフトした「視点」から、「金」を論じておられた。

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